造影剤メーカーが2社、まるごと抜けた。何が起きているのか

公開 2026.08.28

手を動かすことはありません。少し視点を変えて、いつもの仕事を見てみましょう。

同じ1本の造影剤でも、外来と入院で、病院にとっての意味が変わります。

主任・技師長は、国から「買い込みを控えてほしい」と依頼が出ています。

公開時点の情報です

なにが変わった

造影剤の銘柄が減り続けています。薬価基準に載っている造影剤は、2024年2月の225品目から今は142品目です。アルフレッサファーマ(プロスコープ)と武田テバファーマは造影剤から完全に手を引きました。値段が安すぎて作り続けられないためで、国はいま逆に薬価を引き上げています。ウログラフイン注60%の20mLは600円から1,145円へ91%上がりました。

なにをすればいい

撮影のやり方は何も変わりません。ひとつだけ。厚生労働省が3月5日に病院団体へ出した事務連絡に「買い込みは厳に控えていただき、必要量に見合う適切な量を購入するよう」と書いてあります。品薄と聞いて多めに確保しておく、が、いちばんやってはいけないことになっています。

知っているとどうなる

自分が使っている造影剤の代金を、誰が払っているかが分かります。外来なら薬剤料として請求できます。DPCの入院なら請求できず、病院が払います。そして値上がりが大きい薬ほど、入院で使われる割合が高い。ウログラフインは94.8%が入院です。

助けているのはメーカー、払っているのは病院
いま見ているもの
造影剤が、病院に届くまで
メーカー病院

メーカーが作って、病院に届きます。ここまでは、ふつうの流れです。まだ、誰かが損をしている話ではありません。

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ここは、まだ分かっていません

品目数の増減は、薬価基準収載品目リストをコードで突き合わせたものです。プロスコープについては販売中止の案内まで確認しましたが、消えた87品目すべての理由を1件ずつ確かめたわけではありません。撤退のほかに、規格の整理や統一名収載の見直しが混ざっている可能性があります。 「国が上げた薬ほど入院で使われている」は、4品目を並べただけです。そう決まっているわけではありませんし、因果も確かめていません。品目を増やすと崩れる可能性があります。 入院と外来の比は、NDBオープンデータの2023年4月から2024年3月の数字です。いまの比ではありません。ガストログラフインが止まっている今は、代わりに別の薬が使われていることもあり得ます。 DPCではない入院(出来高の病院)については書いていません。そこでは造影剤を請求できます。「入院なら病院が払う」はDPCの話です。 健診のバリウムがどこから支払われているかも、途中までしか追えていません。対策型の胃がん検診が健康増進法にもとづく市町村の事業で、保険診療ではないことは確認しました。ただ、委託の単価に薬の値上がりがどう反映されるのかは分かっていません。ここは技師に近い話なので、分かったら別に書きます。 不採算品再算定の対象を選ぶときに「薬価と市場実勢価格の乖離が一定率以内であること」という条件がある、という話もあります。だとすると値引きを求めるほど対象から外れることになりますが、令和8年度の要件の原文までは確認できていません。だからこの記事では「安く買い叩くと対象から外れる」とは書いていません。厚生労働省が実際に書いているのは「適正な価格で流通することが望まれます」までです。

出どころ(原文が開きます)
薬価基準収載品目リスト(内用薬・注射薬)(厚労省 ※本文の薬価はすべてこの一覧の各時点版から直読み。ウログラフイン注60%は統一名「アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン注射液」で収載)令和8年度薬価改定 別添3「基礎的医薬品対象品一覧」(厚労省 ※造影剤25品目はこの一覧から数えたもの)令和8年度薬価改定 別添4「不採算品再算定対象品一覧」(厚労省 ※造影剤7品目)令和8年度薬価改定において不採算品再算定を適用された医薬品及び最低薬価品目の適正な流通について(厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課, 2026.3.5 事務連絡 ※日本病院会宛)診療報酬の算定方法 別表第一 医科診療報酬点数表(厚労省, 令和8年度 ※第4部 画像診断 通則1「画像診断のために使用した薬剤料は別に算定できる」)厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法(令和8年厚生労働省告示第96号 ※別表2 イ(6)「第2章第4部画像診断の費用」が包括)第10回NDBオープンデータ【注射】性年齢別薬効分類別数量(厚労省, 2023.4〜2024.3 ※入院/外来(院内)/外来(院外)の3シート)「ガストログラフイン経口・注腸用」ニトロソアミン化合物検出のお知らせ(第2版)(バイエル薬品, 2026.7 ※PMDA 掲載分)製品に関するお知らせ(バイエル薬品 ※限定出荷・解除の通知はここに並ぶ。2026.8.27 時点で解除通知は無い)プロスコープ®販売中止のご案内(アルフレッサ ファーマ, 2024.5 ※12品目・販売終了予定 2024年9月)バリコンミール販売中止のお知らせ(堀井薬品工業, 2026.4)
田爪

ここまで調べて、少し嫌な感じが残りました。

国が薬価を上げるのは、造影剤が無くなると困るからです。そこは分かります。メーカーに作り続けてもらうために、値段のほうを上げる。

ただ、上げた分を病院が請求できるとは限らない。入院で使えば、そのまま病院が引き受けることになります。助けに行く先と、お金を出す先が違う。

しかも、上げれば止まらなくなるわけでもないです。ガストログラフインは国の一覧に二重に載っていて、それでも今、止まっています。

だからといって、どうすればいいのかは私にも分かりません。

ただ、薬を守るために値段を上げるとき、そのお金を最後に誰が出しているのか。そこまで含めて見ないと、安定供給という言葉だけでは見えないものがある気がしますけど。

・ 元・診療放射線技師 → 医療系ソフトウェア開発
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