今年から立入検査で見る無資格のX線照射。うちでは誰が押しているか
対応が必要です。
対象は 血管撮影・IVR・一般撮影。ほかの部署は、押しているのが医師と技師だけなら、そのままで大丈夫です。
主任・技師長は、監督する側の責任として名指しされています。
公開時点の情報です
今年度から、国が都道府県に出す立入検査の通知に「無資格の人がX線を出していないか指導する」が入りました。去年の同じ通知には、一行も書かれていません。ただし検査表に新しい欄ができたわけではなく、検査に行く人が見ておく留意事項のほうです。
免許を持っている人が押しているなら、慌てることはありません。やることがあるとしたら一つで、うちで曝射ボタンを押しているのが本当に医師と技師だけか、一度見てみること。手術室とポータブルが、穴になりやすいところです。ただし見張る係になる必要はありません。監督する責任は管理者の側にあると書かれています。
この話には前があります。去年、メーカーの営業の方が手術中にX線を出していたという報道があって、そこから来ています。経緯を知っていると、検査で聞かれたときに「なぜこれを聞かれるのか」が分かります。
装置のそばでは、この4つが起きています。ここまでは、誰がやるかの話ではありません。
毎年6月に、国から都道府県へ「今年度の立入検査ではここを見てください」という通知が出ます。今年の分(6月12日付)に、去年まで無かった一文が入りました。
加えて、無資格者がエックス線の照射に関わっているとの指摘があることから、無資格者による医療行為は違法であることを指導する。
去年の同じ通知も開いて確かめました。「エックス線」という言葉は一度も出てきません。
どれくらいの重さの話か
先に、大きさを間違えないように書いておきます。
この一文が入ったのは実施通知のほうです。同じ日に、同じ局長名で「立入検査要綱の一部改正」ももう1本出ていて、検査表と検査基準が載っているのはそちらなのですが、開くと「無資格」という言葉は一度も出てきません。
つまり、検査表に新しい欄ができたわけではないです。検査に行くときの留意事項として、指導する対象に挙がったところまで。どちらの通知も、地方自治法でいう技術的な助言です。
なので「来月から減点される」という話ではありません。ただ、去年まで一言も無かったものが名指しで入ったので、聞かれる可能性のほうは上がりました。
きっかけは報道です。2025年の春、医療機器メーカーの営業担当者が整形外科の手術に立ち会って、資格を持たないままX線装置を操作していた、と報じられました。厚生労働省は同じ年の11月に、医政局の4つの課の連名で事務連絡を出しています。総務課、地域医療計画課、医事課、そして医薬産業振興・医療情報企画課。最後の1つが入っているところに、この件の性格が出ています。資格の話であると同時に、メーカーが検査室に入ってくる場面の話でもある、ということです。
押していいのは、3つの職種だけ
事務連絡の別紙は、条文の確認から始まります。医師・歯科医師・診療放射線技師でなければ人体に照射してはいけないこと(技師法第24条)、違反したら1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金であること。ここまでは、たぶん知っている話です。
読んでおいたほうがいいのは、その次に置かれている一文でした。
医師、歯科医師又は診療放射線技師でない者に対して、放射線の人体に対する照射を指示するなど診療放射線技師法に違反する行為を行わせた場合や、看護師等でない者に対して、診療の補助を指示するなど保健師助産師看護師法に違反する行為を行わせた場合には、共犯となるおそれがあること。
押した人だけの話ではありません。「押しといて」と言った側も入ります。
メーカーの人は、装置に触ってはいけないのか
そうではありません。技師法が「技師でなければやってはいけない」と決めている範囲は、思ったより狭いです。第24条は「第二条第二項に規定する業をしてはならない」と書いてあるだけで、その第2条第2項がこれです。
医師又は歯科医師の指示の下に、放射線の人体に対する照射(撮影を含み、照射機器を人体内に挿入して行うものを除く。以下同じ。)をすることを業とする者
人体に対する照射、と書いてあります。装置を運ぶ、据え付ける、点検する、ファントムで試し撮りをする——このあたりは技師法の外です。線が引かれているのは「装置に触るかどうか」ではなく、人体に向けて出すかどうかのところ。上の図の3行目と4行目の間です。
立入検査の通知は、メーカーの立会いについてもう一つ書いています。「立ち会い実施確認書の写し等について確認した上で、必要な指導を行う」。この確認書について、業界団体が定めた基準の側を読むと、思っていたのと逆でした。
受領した「立会い実施確認書」の保存期間は5年間とし、事業者が管理を行う。
保管するのは病院ではなくメーカーのほうです。病院は渡す側。だから「うちには確認書のファイルが無い」という施設は普通にありえます。無いこと自体がまずいのではなく、立会いのたびに確認書を出す運用になっているかのほうが先の話です。
で、技師は何をするか
やることがあるとすれば、一つだけです。
うちで曝射ボタンを押しているのが、本当に医師と技師だけか。
穴になりやすいのは、技師以外の人が装置のそばに立っている場面です。手術室のCアームと、ポータブル撮影。
ただ、この問いが軽く響く施設と、重く響く施設があります。
100床未満の病院は全国に2,916施設あって、全病院の35.9%を占めます。そこの診療放射線技師は、1病院あたり常勤換算で1.1〜2.3人です(令和5年医療施設静態調査)。30〜39床だと1.1人。1人いるという意味ではなく、施設ぜんぶで1人分、という意味です。
夜間や休日に技師が施設にいない時間があるなら、問いは「誰が押しているか」ではなく「いないときどうするか」に変わります。そこは、この記事では答えを持っていません。
ただ、見張る係にはならないでください
一番よく知っているのは、たぶんその部屋にいる技師です。だから最初に気づくのは、ほぼ確実に技師のほう。ただ、そこから「じゃあ技師が見ておいて」に行くのは、行き先が違うと思います。
事務連絡は、監督する責任がどこにあるかを、はっきり書いています。
具体的には、病院又は診療所の管理者は、それぞれ必要な資格を有していない者が放射線の人体に対する照射、医業若しくは歯科医業又は診療の補助を業として行うこと又はこれらの者に対し従業者がこれらの行為を行わせることがないよう、適切に従業者を監督すること等が求められること。
主語は管理者です。医療法第15条第1項から来ています。立入検査そのものも、都道府県が病院に対して行うもので、技師個人が受けるものではありません。
そしてこれは、今年できた責任ではありません。医療法第15条は前からありますし、去年11月の事務連絡にも同じことが書いてあります。今年変わったのは、検査に行った人がそこに触れる可能性のほうだけ。新しい宿題が現場に降ってきた話ではないんです。
技師法が技師に課しているのも、自分の手元までです。自分が押すこと。医師の具体的な指示を受けること(第26条第1項)。照射したら遅滞なく照射録を作って、指示した医師の署名をもらうこと(第28条第1項、違反は20万円以下の過料)。強いて足すなら、さっきの共犯の話があるので、自分が誰かに「押しといて」と言わないことまで。
なので「うちで誰が押しているか見てみる」と書いたのは、見張れという意味ではありません。気づいたことを、責任を持っている人に渡す、そこまでです。
気づくのは専門職の目で、引き受けるのは管理職の仕事です。現場だと、この2つはくっつきやすいと思います。分かっている人がその場にいるので、そのまま実務まで持っていかれる。行政が新しく何かを書いたときに、いちばん現場に近い人のところへ全部落ちてくるのは、よくあることです。
今回のは、落とさなくていいやつです。
装置のそばでは、この4つが起きています。ここまでは、誰がやるかの話ではありません。
技師が施設にいない時間帯のことです。夜間や休日に技師が常駐していない施設で、その間の照射を誰がどう扱うのが正しいのか。今回の通知も事務連絡も、そこには触れていません。押していい人が限られているという原則だけがあって、いないときの答えは書かれていない状態です。 照射ではないけれど、患者さんに触る行為のほうも分かりません。体を支える、板を差し込む、といったところ。これは技師法ではなく保健師助産師看護師法(診療の補助)の話になって、事務連絡もその法律を並べてはいるものの、どこからが診療の補助なのかの線は引いていません。 立ち会いの確認書を病院側がどこまで持っている必要があるのかも、まだです。取り決めのほうを読むと、原本を5年保管するのはメーカー側で、病院は渡す側になっています。立入検査の通知は「写し等について確認した上で」と書いていますが、病院に写しを残す義務があるとまでは書かれていません。実際の検査でどこまで踏み込まれるかも、立入検査をやるのは都道府県なので地域差が出そうです。分かったら、この記事を更新します。
人が少なくて、決まった人だけで回している古い病院。ああいうところだと、技師に限らず、ほかのコメディカルでも、似たようなことは今でもあるんじゃないかと思います。——法律の上でははっきりアウトな話なので、見たと書くことはできません。正直あると思う、というだけです。
悪気があってやっているわけではないと思うんです。そのほうが効率よく回るからで、人がいない中での判断としては、たぶん合っている。
ただ、何か起きたときには、責任の話として全部そこに戻ってきます。それはほぼ確定していて、でも今すぐ困っているわけでもない。
そこまで分かっていて、じゃあどうするのかと言われると、なんとも言えないですが。